きょうもおいしいこと、仕込み中。FROM TOKYO Diner

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食べかたのお手紙。その3

「最近、事務所でカラーコピーをとるためには、

 吉太郎の許可がいるんですよ。」

8月、池袋西武の中華料理屋さんで

「食べかたのお手紙。」の打ち合わせをしながら

和枝さんがふと口にした一言。

吉太郎くんが、経営者への道を進んでいるんだなぁと思いながら、

初めて気仙沼にお邪魔した日のことが頭に浮かんでいました。

 

and recipeが気仙沼で

最初に斉吉商店の皆様にお会いしたのは

東日本大震災があったちょうど3ヶ月後、2011611日(土)のこと。

朝5時ごろ車で東京を出発して、5時間

宮城県庁に務める山ちゃんこと山田康人さんと仙台で合流しさらに車で2時間ほど走る。

運転が好きで、遠出があまり苦ではないわたしも

7時間の運転でさすがに少しぐったりとしていた。

そんな状況でも、初めてお会いする気仙沼の方々を前に

こちらが疲れた顔で挨拶している場合ではないと

妙な緊張感ととともにハンドルを握っていると、

やっと目の前に「ようこそ、気仙沼へ」というカモメの看板が見えてきた。

 

最初にお会いするのはどんな方なのか

一緒に旅をしていた編集者2名、カメラマン1名も

それぞれに緊張していたがゆえに、

気仙沼に入るとみんなの口数が妙に多くなっていた。

 

和枝さんがその当時「豪邸」と呼んでいた蔦の絡まるご自宅で

わたしたちを迎えてくださった。

丁寧に丁寧に挨拶をされる和枝さんのお顔を見ていたら

運転でぐったりしている場合ではないとお腹の下の方にぐっと力が入る。

階段をあがると、洗濯物干しに 海水をかぶった写真が干されていて

その奥で社長の純夫さんがBBQ用のコンロでさんまを焼いてくださっていた。

「みんな流されてしまったけれど、

 冷蔵庫の奥に一夜干しのさんまが残っていたから、食べていただきたくて。

 あと、貞子さんがあざらという気仙沼の郷土料理も作っているから

 召し上がって行ってくださいね」

と、私たちはただただ、ものすごいおもてなしを受けてしまって

しばしその場所にもっとも正しい言葉がなんなのかわからなくなっていた。

 

簡単に言葉にできない状況の中で、

こんな風にあたたかく、初めて会う人を迎えられるなんて

どうしたらこんなことができるのだろうと

感謝とともに、ただただ驚いていた。

 

あの時もそうだったし、今も変わらず

斉吉商店のみなさんは、社員のみなさんも含めた

家族の力の集結力がものすごいのだ。

 

私たちが初めて出会った頃から、

長男の吉太郎くんにえみりちゃんという素晴らしいお嫁さんが来て

かわいいお孫さんが2人誕生した。

次男の啓志郎くんにもあゆちゃんというかわいいお嫁さんが来て、

これまたかわいいお孫さんが一人誕生した。

日本橋三越の店舗を切り盛りしている三女のかなえちゃんも

最近結婚されてまた大切なご家族が増えた。

 

今回「食べかたのお手紙。その3」の撮影も

行商で全国を飛び回っている斉吉のみなさんのどなたが参加するのか

ぎりぎりまで決まっていなかった。

気仙沼、東京近郊で数カ所、大阪と

ものすごいパズルの中に撮影を組み込んでくださった。

 

目が回るような忙しさの中でも、この撮影を楽しみにしてくださって

撮影用のアレンジが登場するたび、

このお料理がどんな風に嬉しいかを言葉にしてくださる和枝さん。

撮影現場に来れなかった啓志郎くんに食べさせたいからと撮影後のお料理を包む吉太郎くん。

 

そんな斉吉の皆様の様子を思い出しながら、

本当に幸せなお仕事をさせていただいているなぁと

手元に届いた「食べ方のお手紙。その3」を開きました。

 

斉吉の皆様。

出会いの日からいつも、いつもありがとうございます。

 

「食べかたのお手紙。その3」お手にとっていただく機会がございましたら

斉吉のみなさんの愛情をたっぷり受け取っていただきつつ

アレンジレシピもおいしく召し上がってくださいませ。